研究概要 |
血液系細胞は血液幹細胞より各方面に分化し, 末梢血にリンパ球, 赤血球, 顆粒球等として存在する. これら各細胞は多様な機能を有し, それに対応する変化が細胞膜に存在すると考えられる. しかし, 各分化段階にある均質な多量の細胞を得ることは難しく, 各種の白血病細胞が研究モデルとして使用される. 私たちのグループはこれまで, ラットの赤血球, 赤芽球性白血病, ヒトの赤芽球性白血病(K562), 顆粒球と単球分化誘導後の前骨髄性白血病, 骨髄芽球(KGla)の各細胞について検討し, 分化に伴う細胞膜の変化を明らかにしてきた. 残るリンパ系細胞についても検討し, 特に幼若な幹細胞レベルも含めて検討する目的で, 長期培養株の樹立とその性格づけを行った. 14才女児の再発時, 再々発時骨髄細胞より培養株KH-3A, 3Bが, 11才男児よりKH-4が樹立された. KH-4はCALLA陽性だが, KH-3はより幼若な細胞起源と考えられた. KH-3Aのアガロースクローニングにより分離した亜株は, TPA処理によりT, Bリンパ球の性質が誘導され, 染色体分析でも異なるクローンであることが確認された. 同細胞を用いてリンパ系幹細胞の細胞膜糖鎖に迫る予定であったが, 細胞の性格づけにてまどり, T細胞柔の分化と膜構造について分析した. 成人T細胞白血病はレトロウィルスの関与が考えられる日本に多い白血病で, T2段階の白血病である. SDS-PAGE法による糖蛋白, ヒドウジン分解後のエキリグルコシダーゼ逐次消化による糖鎖解析を行い, T細胞分化に伴って異なるバンドパターン, 構造, 量比が観察された. リンパ系幹細胞に近い性質を有する細胞株についての分析は, はじめたばかりだが, 同研究の継続, 更に血液幹細胞への研究へと発展し, 血液細胞の分化に伴う細胞膜変化を次第に明らかにしうると考える.
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