研究概要 |
アレルギー炎症における細胞, とくに好酸反応はおもにT細胞由来の酸球遊走因子と特異的な遊走抑制因子によって調節される. これらの因子は炎症局所から分離され, その反応の動態をよく反映することから, 共同研究者の林が提唱しているナチュラルメディエーターとしての条件を満足すると予想される. 安全フロイントアジュバント(CFA)処理によってマクロファージ反応は増強されるが, 好酸球反応は著明に抑制される. この抑制は炎症局所および血清中への遊走抑制因子の出現によることを明らかにした. さらに, この抑制因子はT細胞が産生するリンホカインの一種であり, 好酸球の膜表面で上記遊走因子と競合的に作用する. この好酸球遊走抑制因子の産生はCFA処理動物脾マクロファージが産生する物質がT細胞に作用することによって誘導すると予想された. いっぽう, 同一抗原であってもアラムをアジュバントとして用いると, 好酸球反応の著明な増強がみられるが, この増強はマクロファージ由来の好酸遊走因子産生増強物質が活性化T細胞による遊走性リンホカイン産生を選択的に増強することによると予想された. また, CFA処理によりマクロファージ反応の増強がみられるが, この増強には上記の好酸球遊走因子産生増強物質に類似したマクロファージ由来の物質によると予想された. 以上のことから, 炎症細胞反応におけるT細胞が産生するリンホカインの重要性が確認されるとともに, そのリンホカイン産生においてマクロファージ因子の質的な, すなわち, アジュバント刺激によってマクロファージから産生される物質種類によって異なる遊走性リンホカインがT細胞により産生されることによる制御機構の存在が明らかにされた. さらに, ヒト疾患, 特に木村氏病や過好酸球症候群など好酸球増多を示す疾患における好酸球反応の制御機構について検討を進めている.
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