研究概要 |
絶食メスラット腹腔内へエチオニン(E)を投与すると数時間内で脂肪肝が発現し始め, 肝細胞内脂肪滴生成機序を解明するには極めて有力な実験方法である. 我々が開発した電顕微細胞化学的中性脂肪検出法では, 生化学的に有意の中性脂肪増加がみいだしえないE投与後3時間で, 既に肝細胞小胞体内に中性脂肪を主とする微小な脂肪顆粒を多数みいだす. E投与5時間以後時間の経過と共に, 大小の原形質内脂肪滴が増える. 我々が開発中のenbloc鉛染色手技を用いる電顕的検索法でこの発現過程の肝組織を観察し, 肝細胞小胞体内脂肪顆粒から原形質内脂肪滴への直接移行像を追求した. 各自それぞれの融合像はみられるが, 両者の移行像と考えられるものはみいだしえなかった. なお, いわゆるホスホリパーゼ消化法で処理された上記実験動物肝細胞の若干の生体膜に脂肪肝発現と無関係に反応産物を含む微小な電子密沈着物を認めるが, それは生体膜隣脂質の一部がホスホリパーゼで消化された結果であると推論できた. 次に, 体重300g余の終夜絶食メスラットで, 絶食開始11時間後にE(1g/kg)を, ついで14及び17時間後とコルヒチン(2.5mg/kg)を2回投与し, 絶食20時間後で全例屠殺検索したが, E投与のみ, コルヒチン投与のみなどの絶食対照群も設定した. これら肝小葉周辺帯肝細胞内に発現する脂質構造物を電顕的に検索すると共に, 肝脂質をも生化学的に定量した. E投与をうけた両群に生化学的ないし光顕組織化学的に脂肪肝発現をみるが, E単独投与群に比べて, 両者併用群では生体膜に包まれた中等大脂肪顆粒が極めて多く, 逆に原形質内脂肪滴はすくない. このことは, コルヒチンがエチオニン脂肪肝にみられる原形質内脂肪滴の生成を強く抑制することを示唆し, それはコルヒチンの細胞骨格傷害効果によるものか, 直接的な代謝作用によるものかを現在研究中で, その形態学的方法論を検討している.
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