研究概要 |
この研究では、間接蛍光抗体法による旋毛虫感染時における筋病変成立機構の解明、および薬剤投与後における治癒判定などに対する本法の有用性についての検討を目的としている。 1.筋病変は、当教室で継代している6つのstrain(Iwasaki,Thai,USA,Polish,PolarおよびYamagata)およびTrichinella Pseudospiralioの7系旋毛虫を感染させたマウスおよびラットの骨格筋についてH・EおよびPAS染色を行って観察した。その結果、7系すべてで幼虫が筋線維に侵入する時期は6〜8日後であり、その後は次第に筋線維内の幼虫が増加する。また、T.pseudospiralisを除いては炎症性反応が高度となる。 2.間接蛍光抗体法は、抗原の作製、Freund's complete adjuvantを用いた抗体の作製,抗血清の検定,交叉反応出現状況などについて検討を加えた。交叉反応に関しては、ウエステルマン肺吸虫症,糞線虫症,広東住血吸虫症,蛔虫症,包虫症およびアニサキス症患者の虫体を含んだ組織切片とでは全く反応の出現は認められず、実験的に感染させたマウスおよびラット筋線維内の旋毛虫幼虫とだけ、特異的な蛍光反応の出現が認められた。しかし、同じマウスおよびラットの肺および腸管のホルマリン固定組織切片では、自己蛍光の出現が強く、循環幼虫の確認は困難であった。 これまでの結果から組織の間接蛍光抗体法は、特異的な反応が出現し、疑わしい患者の血清材料などを用いての診断的応用も可能と考えられる。また、実験的に感染させた動物血清との間にも特異的な反応出現が認られており、今後は、通常の方法では診断が困難な早期の体内移行時の感染証明ならびに治癒判定にも役立つことが期待される。
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