研究概要 |
Entamoebaのシスト形成機構を明らかにするために, 主として蛇の病原性アメーバーE.invadensを用いて生化学的・形態学的検討を行ない, 以下の結果を得た. 1.シスト中の核数の多少にかかわらず, シスト当りのDNA量は全て4Cの値を示し, 減数分裂の可能性を示唆した. また, 脱シスト後の栄養型は, 異常な接合の結果と考えられる巨大多核細胞を形成した. 2.染色体数の調査では, 一核シストに10〜12本, 四核シストに5〜6本の染色体様構造が観察れ, 減数分裂の存在を示唆した. しかし, 減数分裂の示標となるシナプトネーマ構造は見出せなかった. 3.11種の細胞分裂阻害剤を用いて核分裂中期像の増大を試みたが, いずれの阻害剤も効果はなかった. verrcarinAのみ強い細胞分裂阻害を示し, シスト形成も著しく阻害された. 特に, 赤痢アメーバ(HM-1株)に対して, ED50値が約1.0ng/mlと極めて低濃度であり, 抗アメーバ剤としての今後の応用に興味が持たれた. 4.E.invadensでは, Ca^<2+>依存性代謝活性を高めるとシスト形成が著しく阻害され, cAMP依存性の薬剤では影響をうけなかった. 5.猿から分離した大腸アメーバもグルコース除去培地で培養するとシスト形成が誘導されたが, 赤痢アメーバではシスト形成は全く認められなかった. 6.ヒトH-rasをプローブとしてアメーバにおけるras相同遺伝子を検索したところ, E.invadensからrasの存在が確認された. また, 酵母の胞子形成制御遺伝子であるMAT, mam, mei1〜3, およびキチン合成酵素の遺伝子をプローブとして相同遺伝子の検索を試みたが, 見出せなかった.
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