研究概要 |
本研究での成果は, まず, ウマブユの室内での実験, 観察により, これまで不明であったブユ成虫の交尾, 吸血, 卵の発育, 産卵, 卵の孵化に関して詳しい知見が得られたことである. ヒロシマツノマユブユでは未吸血での卵の発育を示した. さらに, ミヤコオオブユ, アオキアシマダラブユ, ヒメアシマダラブユ, アシマダラブユ, オオアシマダラブユおよびアカクラアシマダラブユの6種のブユについては, 今回の室内および野外での観察により, 初めて産卵方法を明らかにした. このなかでもミヤコオオブユの産卵場所が川岸に生えている蘚苔であることを発見し, さらに卵の孵化までの過程を, 追究出来たことは, 水面上で産卵するブユ種がこれまで報告されていないだけに, 特筆されよう. また, 我が国のブユではほとんど知られていなかった孵化幼虫から成虫までの発育速度も, 今回4種のブユで初めて明らかにされた. このような今回の研究を通じて, ウマブユでは室内での累代飼育が可能であることがはっきりした. また, 他の5種のブユでは室内での卵から幼虫, 蛹, 成虫までの飼育が可能であることが分かった. これらのブユ種では室内での雌成虫の産卵も観察されたが, 交尾に関してはウマブユと異なり狭所交尾性は見られなかった. 今後, 室内での交尾を誘導させる条件を検討する必要がある. 吸血についてはウマブユ以外ではほとんど検討できなかった, 今回使用した実験動物のほかに人口吸血装置を用いることで良い結果が期待できると思われる. 幼虫の飼育では, 飼育方法をさらに改良し, 幼虫までの生存率を高めることが今後の課題である.
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