研究概要 |
患者由来Salmonella braenderup40株, S.typhimurium55株についてプラスミド保有率を調べたところ, 前者は38株(95%)が74Mdalプラスミドを, 後者は17株(31%)が60Mdalプラスミドを保有していた. プラスミド保有菌株をL-ブロスを用い, エチジウムブロマイド存在下で, 42°Cで継代培養を行ってプラスミドを脱落させた. S.braenderupのブラスミド保有株, 脱落株を各々2株ずつ用い, HeLa細胞浸入性, ウサギ結紮腸管ループ試験, Sereny試験を行った結果, プラスミドの有無にはかかわりなく, いずれの菌株もこれらの試験は陽性であった. しかし, 74Mdalのプラスミド保有株10^8個を, ddYマウスの尾静脈内に接種したところ全てのマウスが死亡したが, 脱落株では死亡しなかった. 以上の成績はS.braenderupのヒトに胃腸炎を引き起こす病原遺伝子は, 染色体遺伝子上にコードされていること, 一方, マウスに対するビルレンスに関しては, 74Mdalプラスミドが何らかの役割を演じている可能性が示唆された. S.typhimuriumの60Mdalプラスミド保有株, 非保有株を用い, 病原性に関する試験を行った. 60Mdalプラスミドは, HeLa細胞浸入性, ウサギ結紮腸管ループ内液体貯留能, モルモットの角結膜炎惹起能に関与しないが, マウスの第二次敗血症惹起ビルレンスには関与している可能性が示唆された. 走査電子顕微鏡によるウサギ小腸上皮の観察の結果, S.braenderup, およびS.typhi-muriumは絨毛, および微絨毛を破壊することが分かった.
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