研究概要 |
細菌の細胞融合には安定L型菌あるいはプロトプラストが用いられる. 前者には親株の性状を欠く場合が多く, 後者を培養するには親株に復帰させるか, あるいはL型菌に転換させねばならない. これらの問題を回避して細胞融合法を医学細菌学の様々な研究に資するための基礎的研究を実施した. 戸田らは, まずStaphylococcus aureus MS353(pCp)株のLysostaphyinプロトプラストを供試して, 球菌型あるいはL型菌への転換条件を, 種々の復帰培地を用いて検討した. ついで, 代表的な口腔レンサ球菌より. L型菌を誘導して, これらとS.aureusとの融合株(fusant)を得て, その菌体成分の化学的ならびに生物学的性状を, 両親株のそれらと比較するというプロジェクトに着手した. 第一ステップとして, Streptococcus mutans,Streptococcus sanguis,Streptococcus salivarius,ならびにStreptococcus faecalisの種々の菌株よりL型菌を誘導することを試みた. その結果, 供試したほとんど全てのS.faecalis菌株よりL型菌を誘導することに成功し, 現在までに, S.faecalis T-2株については, S.aureusのL型菌とのfusantをすでに得ている. 但し, 親株に復帰しやすい不安定L型菌を用いた場合には, fusantを得ることはできなかった. 一方, 高田, 辻本らは適当なfusantが得られた後に, その菌体成分の性状を調べる実験系を確立するために, グラム陽性菌, グラム陰性菌, さらには抗酸菌におよぶ多種の細菌より, 多様な菌体成分を調整し, それらの化学的ならびに生物学的性状を詳細に検討した. さらに細菌菌体成分関連化合物についても, 構造-活性相関をめぐる研究を展開している. 要するに, 適当なfusantが得られれば, その菌体諸成分を分離・精製し, その性状を, 親株のそれらと比較検討するための充分な準備が整い, 今後の研究の進展が期待できると言える.
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