研究概要 |
(1)遺伝子発現の調節について:FプラスミドのsrnB遺伝子は通常はほとんど発現していないsilent geneである. この遺伝子は, RNAポリメラーゼにリファンピシンが結合することによって発現が誘導され, stable RNAが分解される. この発現機構を明らかにするためにin vitroで合成させた_mRNAの分析を行なった. srnBを含む断片をDNA templateとして転写させると, リファンピシン存在下では, 転写産物の大部分は330塩基の長いmRNAであったが, リファンピシン非存在下では, これはほとんど生成せず, 大部分は65塩基の短い_mRNAであった. SIマッピングにより, これらの二種のmRNAの転写開始点が一致していることを明らかにした. srnBのプロモーターと構造遺伝子との間にあるstem-loop構造の一部を欠失したDNAを用いて転写させると, リファンピシン非存在下でも長い転写産物が生成した. 以上より, srnBの転写は通常はstem-loopにおいて終結しているが, リファンピシンの結合したDNAポリメラーゼはこの部位を通過できることによって遺伝子発現が起きると考えた. (2)遺伝子産物の機能について:srnBや, これと同等のpnd遺伝子産物は, 大腸菌の膜透過性を上昇させると推察されるので, 次のことを明らかにした. 遺伝子発現を誘導したとき,1)ONPGの菌体内への取りこみが増加した. 2)高張液中で原形質分離が見られなくなった. 3)スフェロプラストが溶菌した. 4)菌体内マグネシウムが菌体外へ流出した. 以上の結果から, 遺伝子産物の機能は細胞質膜に一種の孔を生じさせることで菌体外Mgの流出をもたらし, そのためリボソームRNAはRNaseにより感受性になると考えられる. この孔の形成は同時にペリプラズムに存在するRNaseIの細胞質内への流入をもたらし, これによってstable RNAが分解されると考えた.
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