研究概要 |
T細胞を介するいわゆる細胞性免疫は胸腺依存的な免疫応答と考えられているが, ヌードマウスでは成立しないにも拘わらず, 新生時胸腺摘出(NTX)マウスでは誘導成立に至ものがみられる. リステリアに対する感染防御免疫はその代表的なものであり, 本研究では, この胸腺依存性の低いリステリア特異的T細胞の性格付けと, 感染防御に関与するT細胞由来のリンフォカインのうちその性格や防御発現における重要性が充分明らかでないMCFの解析を主要な目的とした. リステリア生菌で誘導される遅延型過敏反応や獲得抵抗性はNTXマウスでも正常にみられ, この胸腺依存性の低いエクェクターT細胞はLyt1^+, L3T4^+, Lyt2^-であり, 種々のリンフォカインを産生するがIL-2産生と抗原特異的分裂能は低く, その分化誘導はクローン増殖への依存性が低いのが特徴と思われた. リステリア免疫T細胞を抗原特異的に刺激した培養上清を出発材料としMCFの分離精製を試みた. ゲルロ過によりMAF活性の混在しないMCF活性画分が得られ, IFNγや補体因子とは異なる蛋白であることが確認された. 得られたMCFをマウス腹腔に投与すると10時間目をピークとして強いマクロファージの集合がみられた. そこでこの時期にリステリアによる攻撃感染を行ない, 感染防御能をみたところで強毒株に対しては少量の攻撃に対してのみ有効であったが, 弱毒株では大量の感染にも有効な防御発現がみられ, 投与MCFの拡散が少ないと思われる足蹠における局所感染では強毒株に対しても有意の防御を示した. またIFNγのinvivo投与による感染防御発現においてもMCFは協同作用を示した. これらの成績から, リステリアに対する免疫防御に担うT細胞は胸腺依存性が低く, このT細胞由来のリンフォカインのうちMCFは単独でもある程度の感染防御効果を示すと同時にマクロファージ活性化因子と協同作用をする重要な働きをすることが示された.
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