研究概要 |
S.parvulusあるいはP.magnusとC.difficileとを連続流動培養(CF培養)系ならびに無菌マウスを用いて共存させた場合に, C.difficileの毒素活性が共存菌によってどのような修飾をうけるかについて細菌生態学的立場から検討を企てた. CF培養条件下で得られた結果を総合すると, 毒素産生性C.difficileの総菌数と細胞毒素活性値との間では積極的に有意の相関はみられないようであった. そして細胞毒素活性値は, S.parvulus共存群において最も低値を示す結果が示され, 更に又細胞毒素活性値の上昇と芽胞形成比の低下という現象が観察され, 相互に逆相関の関係がみられた. 以上の様なCF培養条件下で得られた結果は, 無菌マウスを用いた実験においても再現された. 芽胞形成比が高値あるいは低値を示すということは, 3群間で芽胞産生数に著明な差がみとめられないので, それは総菌数に依存して発現される様に思われる. しかしながら細胞毒素活性値は総菌数に依存しないで発現されるという成績から, 両者間に相関性がみとめられないということが示唆された. このことから考えると, C.difficileの毒素の合成が促進される時期は, 栄養型細胞からの芽胞形成過程の中でのあるステージにあるのではないかということが推論される. S.parvulusとC.difficileとの共存システムの中で, C.difficileの細胞毒素活性作用が修飾され, その活性が低下するという成績は, 細菌生態学的観点から, そして又芽胞形成という現象と関連して将来への魅力的研究課題を提供している.
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