研究課題/領域番号 |
61570222
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
細菌学
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
辨野 義己 理化学研究所, ライフサイエンス培養生物部, 研究員 (40087599)
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研究分担者 |
光岡 知足 東京大学, 農学部, 教授 (10087596)
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研究期間 (年度) |
1986 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1988年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1987年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1986年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 腸内フローラ / クロストリジウム / 発癌 / 分離法 / 分類 / 腸内代謝 / Clostridium / 腸内Clostridium / 食餌成分 / 加齢 / 糞便 / 選択培地 |
研究概要 |
昭和61年度より昭和63年度の3年間の本研究より以下の成果が得られた。 1)ヒトの腸内よりClostridiumの分離のためにこれまで用いられている80℃、10分間の熱処理、エタノールおよびクロロホルムなどの薬物処理の他に、新たに3種類の選択培地の考案を行ない、ヒトの腸管由来Clostridiumの分離に適していることが明らかにされた。 2)これらの選択培地を用いてヒトの腸内より分離されたClostridium spp.の糖分解性状、生化学的性状、代謝産物、薬剤感受性およびDNAのG+Cモル%などによって、蛋白分解性および醗酵性の強いグループ、蛋白分解性の強いグループ、醗酵性の強いグループおよび両性質が弱いグループの4群に分類されることが明らかにされた。さらにこれらの分類体系により、食餌成分および老化と腸内Clostridiumの関係を解明する研究の一環として、健康成人8名の高肉食摂取時におけるClostridium spp.の変動を検索したところ、分離株108菌株の内、醗酵性が強いC.paraputrificum,C.innocuumおよび蛋白分解性の強いC.perfringensの菌数が高肉食によって増加し、また、日本人(農村)とカナダ人(都市)の腸内Clostridium spp.の構成を比較すると、カナダ人において醗酵発の強いC.coccoidesおよびC.tertiumの菌数,C.innocuumの検出率が有意に高いことが認められた。一方、年齢差(特に、20〜30歳代、15名と60歳以上の15名の2グループ)による腸内Clostridium spp.の構成を検索すると、208菌株が分離され、そのうち、60歳以上の老人で蛋白分解性および醗酵性の強いC.paraputrificum,C.innocuumおよびC.perfringensの菌数が高いようであった。このように発癌、特に結腸癌との関係が深い高肉食・高脂肪食の摂取や老化によってClostridiumの菌種構成が変動することが明らかにされた。しかしながら、既存の菌種として同定できない菌株が予想以上に多く、それらの分類学的研究の重要性がますます示唆された。そのうち、醗酵性の強いClostridium spp.が8グループ、蛋白分解性の強いClostridium spp.が5グループ、さらに醗酵性および蛋白分解性のないClostridium spp.が11グループ認められ、今後、既存の菌種との分類学的研究の必要性が明らかにされた。 3)このようにして分離・同定・分類されたC.innocuum98株、C.paraputrificum88株、C.clostridiiforme58株、C.cocoides34株、C.perfringens45株、C.tertium23株およびClostridium spp.〔未分類株、35種のグループ〕65株、計411株を用いて、発癌に関与する腸内酵素、特にβーグルクロニダーゼおよび7αーデハイドロキシラーゼやアンモニア、インドールおよび硫化水素などの産生能、硝酸塩の還元能を検索して、どのような分離株がこれらの機能を保有するのかを検索した。β-グルクロニダーゼ産生株は既存の菌種に強い反応は認められないが、Clostridium spp.のうち8種に陽性反応が認められ、とりわけClostridium spp.の4種に強い反応を示し、いずれも高脂肪食摂取時に分離された菌株であった。7αーデハイドロキシラーゼ産生株は強い陽性反応をしめす菌種・菌株は認められなかった。アンモニア産生株はC.clostridiiforme,C.perfringensおよびClostridium spp.のうち、7種に陽性反応が認められ、ヒトの老化に伴って高頻度に出現す菌株が多いようであった。さらにインドール(6種のグループ)および硫化水素(3種)の産生株、硝酸塩の還元株(3菌種および5種)など分離されたが、その分離源に特徴は認められなかった。
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