研究概要 |
赤痢菌は大腸粘膜上皮細胞内に侵入し, そこで増殖し, さらに隣接細胞に伝播し細胞を破壊していく. 赤痢菌が上皮細胞内に侵入する過程は, 赤痢菌が上皮細胞に接触することによって誘導される上皮細胞の貧食様作用によると考えられている. この誘導をおこす機構を解析することが本研究の目的である. 赤痢菌が細胞内に侵入できるためには, 赤痢菌がもつ120〜140メガダルトンのプラスミドの存在が必須である. またこのプラスミドを獲得した大腸菌K-12株は, 細胞内に侵入できるようになる. このプラスミド上に大腸菌K-12株に細胞侵入性を与えるのに必要十分な遺伝情報が存在している. 我々はプラスミド上の細胞侵入性因子の解析を試み以下のことを明らかにした. 1.赤痢菌はA.B.C.Dの4群にわけられているが, 4群の菌とも120〜140メガダルトンのプラスミドをもち, それらは機能的に相互変換可能である. 2.D群赤痢菌のもつ120メガダルトンのプラスミドpss120を用いて, コスミドクローニング法により, 大腸菌K-12株に細胞侵入性を賦与するのに十分なDNA断片をクローンした. そのDNA断片は, 約35kbの領域とその領域の右側へ15kb離れたところに存在するinvR 遺伝子とからなっていた. トランスポーソンTnslacを用いた解析から, 35kb領域には少なくとも8個の細胞侵入性に関与する遺伝子が存在した. 赤痢菌の細胞侵入性には多くの因子が関与しているが, それらがどのように働いているのか今後明らかにしていきたい.
|