研究概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染に際して宿主は, 非特異的防御機構と特異的防御機構のそれぞれを動員し, HSVの体内よりの排除や感染よりの回復にあたるが, 中でもT細胞による細胞性免疫機構はHSVに対する抵抗性において中心的役割を果たすものとして広く研究されてきた. また一方では, 細胞性免疫反応の開始時にT細胞へ抗原を提示するいわゆるaccessory cells(皮層ではランゲルハンス細胞;LC)が不可欠であるとされている. しかしながらこのような抗原提示細胞の機能がT細胞による細胞性免疫反応を介し, HSVの感染過程にどのような影響を与えるかについてはいまだ明らかではない. この研究では, マウスの免疫脾細胞と表皮細胞を用い, リンパ芽球化反応およびヌードマウスへの移入実験を行なってLCのHSV感染に対する抵抗性における役割について検討した. さらにLCはUVに感受性が高いので, UV照射がHSV感染の病原性に及ぼす効果をマウスモデルを用いて調べた. その結果, LCはin vitroでHSV抗原提示能をもち, in viroの皮膚HSV感染の制御に重要な役割を果たすこと, そしてLCのin vitroでの副細胞の機能はUV照射によって一過性に抑制され, それは表面Ia抗原の減少と平行していることがわかった. 更に受身移入実験から, HSV抗原に対する免疫の2次応答に際してUV照射によりLC機能が抑制されることで, HSVの感染経過が影響されることが示された. 同時に, UVはHSV初感染の経過にも影響することが示されたが, これにはHSV抗原に対する1次応答に際してのLCの機能の抑制も一因をなしたかもしれない. しかし, LC機能の抑制それ自身がHSV初感染に直接影響を及ぼすかどうかは更に研究の余地がある.
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