研究概要 |
インターロイキン2(IL2)はT細胞やB細胞の増殖・分化に必要なリンホカインで, IL2を産生するヘルパーT細胞はそれに反応して自己増殖が可能であり, このオートクリン増殖は腫瘍化の過程にも関係する場合があると想像される. 本研究では, ヒトT細胞のIL2遺伝子およびIL2受容体の発現誘発と調節機構を分析し, 次の成果を得た. 1)末〓血T細胞を, T細胞受容体T3に対する単グロン抗体で刺激してIL2mRNAとIL2産生を誘発するために必要なマクロファージ(Mφ)の機能を解析し, その役割は3つに分けられることを明らかにした. 第1に, マクロファージは細胞表面のFCレセプターに抗T3抗体を結合してT細胞に提示することにより, 抗T3抗体とT細胞上のT3分子との多分子間相互作用を可能とし, これによりT細胞の抗原受容体Ti/T3の架橋がおこると考えられる. 第2にMφ細胞膜上の或る分子とT細胞表面との相互作用が必要である. この際必要な分子が何かは不明だが, Mφ様細胞株u937では, 必要な分子がインターフェロンγによって発現することが判った. 第3に, T細胞のIL2mRNA産生誘導にはMφ由来の可溶性因子も必要である. この因子の本体は未だ不明だか, 少なくともIL6とIL1の添加によりMφ因子を代用できることを確かめた. 以上3つの要件がすべて充たされるとT細胞のIL2産性を増殖が誘発される. 2)IL2mRNA誘導にはプロテインキナーゼC(PK-C)の活性化が必要なことを確かめ, 活性化の程度はIL2mRNA産性の量的調節に重要なことを示した. 3)サイクロスポリンAはCa^<2+>動員やPK-C活性化に影響することなくIL2mRNA誘導を阻害する. 4)刺激を受けなくてもIL2を産生し, オートクリン増殖を示すT細胞を有する成人T細胞白血病症例を見出した. これは白血病化とオートクリン増殖の関係を示唆する重要な所見である.
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