研究概要 |
本研究ではマウスの常染色体劣性遺伝子lprによって異常な増殖を示すT細胞の分化増殖に関する研究を行ない, 以下の結果を得た. 1.lpr遺伝子によって異常増殖するT細胞は正常リンパ球には認めがたいLp-1抗原を表現している. このLp-1抗原は分子量約10万前後の糖蛋白でエピトープは過ヨウ素酸(NaIO_4)に感受性であり, lpr細胞の糖代謝に異常のあることが示唆された. 2.lpr細胞は正常個体ではB細胞と一部のLy-2^+(CD8^+)細胞が表現しているLp-2抗原が陽性である. この抗原は分子量約22〜24万ダルトンの糖蛋白で, Ly-5抗原の一種であると考えられた. この示唆に基づき共同研究者の西村らがlpr細胞よりLp-2遺伝子をクローニングし, cDNAのシークエンスを行なった. この結果, pre-B cell lineのLy-5(B220)と同じシークエンスが得られLp-2抗原はB220の一種であることが明らかとなった. 以上の研究結果から, lprマウスで異常増殖するT細胞は正常分化を逸脱した細胞集団であることが強く示唆された. すなわち正常個体ではLp-1^+, Lp-2^+細胞は存在しない. 3.一方, lpr細胞にLp-2抗原が発現されることの意義, 特にlpr細胞の増殖と続発する高γグロブリン血症との関係を明らかにする目的で, Lp-2抗原を抗体でブロックしたときの抗体産生の変化を種々の実験システムで検討した. この結果, ALP-2抗体はIL-4とLPS刺激によるB細胞のIgG_1産生を著しく低下させることが明らかとなった. しかし, lpr細胞自体が直接IL-4を産生にすることはなく, IL-4がlprマウスのT細胞の増殖とB細胞の分化に働いている可能性は低いと考えられる. またLp-2はIL-4のリセプターとは明らかに異なり, auti-Lp-2抗体がIL-4によるIgG_1産生を低下させるメカニズムは現在もなお検討中である.
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