研究概要 |
近年自己免疫疾患の血清には通常抗体の出来難い生理的に重要な生体成分に抗体が産生され, その機能解析に有力な手段となっている. 私達はSLE患者血清を用いて, 牛網膜由来の発現型CDNAライブラリーをスクリーニングし, 抗体と反応するハイブリッド蛋白を産生しているクローンを1個得, 更にこれと相同な, 全コーディング領域を含む人胎盤由来のCDNAクローンも得た. 塩基配列から, 蛋白質の全一次構造を推定した. データベースによる検索から相同な配列は見い出されず, 類似の遺伝子はまだ報告されていないと考えられる. また牛と人の両遺伝子で比較出来るアミノ酸配列中, 唯1ヶ所を除いて全て同一であった. このように良く保存された遺伝子には重要な生理的機能が考えられる. そこで上記中発現型CDNAクローンから大腸菌で作らせた融合蛋白質を精製単離し, これを抗原としてポリクローナルとモノクローナル抗体を作成した. 培養細胞を蛍光抗体法で染めると核が特異的に染色され, 推定された一次構造に核内分布に関与するアミノ酸配列の存在と合わせ, これは核抗原遺伝子と考えられる. そこで融合蛋白質に対する抗体価を約250の自己免疫疾患の患者血清についてELISA法で調べた結果, 抗体価の分布が既にKi抗原として知られている核抗原のそれと良く一致することが明らかとなった. また高崎氏より分与されたKi抗原と融合蛋白をウエスタン法によるイムノブロットで調べると, いづれの抗体を用いても共に主蛋白バンドが抗体と反応した. またAH130細胞を^<35>S-メチオニンでラベルし, その細胞抽出液から抗体を用いて精製されるラベルされた蛋白質はKiとほぼ同じ分子量を示し, 非ラベルの融合蛋白で特異的に競合される. 従ってこの遺伝子はKi抗原の遺伝子か, 少なくとも抗原性に共通性のある類似の遺伝子であると考えられる. Ki抗原の遺伝子の単離は未だ報告されていない.
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