研究概要 |
低血圧自然発症ラット作成のため、3世代にわたって選択交配を続けているが、100mmHg末満を維持しつづける株を得るには、なおも世代を追う必要がある。今年度は脳卒中易発生高血圧自然発症ラット(SHR-SP)と対照のKyoto Wistarラット(WKY)とを対象とした。 両者の血中脂質、リポ蛋白isoformの加齢変化を検討した。血清総コレステロール(CH)は生後3か月までは減少し、その後は加齢とともに上昇した。しかし、SHR-SPはWKYよりも低く、3か月までの減少程度が強く、その後の上昇程度はゆるやかで、10か月以降も相当低い。TG、HDL-CHも同様の傾向を示すがCHが最も顕著な差を示した。リポ蛋白isoformとして、Apo A-【I】,A-【IV】,B,E他を検討したが、B,EがCHと並行した。なお、tail-up pick-up法で測定した血圧値は、WKYは120mmHg前後を、SHR-SPでは生後160mmHgから上昇し、6か月頃から220〜230mmHgを維持していた。 高脂肪食を負荷すると、CH,TG,HDLは上昇したがCHが最も顕著であった。しかし、4か月以降のCHはSHR-SPとWKYとの間で差がなくなり、SHR-SPからの脳卒中発生率が抑制された。SHR-SPの血圧は高脂肪食によって20mmHg前後低くなるものの、200mmHg以上を維持しつづける。体重は高脂肪食群が若干重い。Apo A-【I】は、WKYでは57〜60mg/dlで著変がなかったが、SHR-SPでは45mg/dlから30mg/dlに減少した。Apo-Eは、WKYでは44mg/dlから30mg/dlに対して、SHR-SPでは27mg/dlから13mg/dlに半減した。Apo-A-【IV】は、WKYでは若干の増加傾向が認められたが、SHR-SPでは10mg/dl前後で増減は認められなかった。Apo-Bは両群とも増加したが、特にSHR-SPで顕著であった。 高脂肪食により、遺伝的高血圧の脳卒中発生への進展を防止できることが明らかとなり、脳卒中発生抑制には、CH,おそらくLDL-CH,Apo-E,Apo-Bが関連しているようである。
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