研究概要 |
本研究は, 1.世界各国における感作性物質の取扱いに関する調査研究, 2.TDIの吸入感作能の評価に関する実験的研究, 3.感作性物質の予知とその許容濃度設定の方法論の検証に関する調査研究の3テーマで構成される. 即ち, 1においては, 諸外国研究者への私信や文献的検索を通じ, 産業化学物質に関し独自の許容濃度を持つ35ヶ国中, 感作物質にその旨の特別な記載をしている国は8ヶ国にすぎず, それらの国においても, その許容濃度はとくにアレルギー発症を予防する値として示されたものではないことを明らかにした. さらに, 上記の知見を参照し, ACGIHのTLV表に掲げられている感作物質やその他の計80物質を主たる反応の場を呼吸器と皮膚に大別して示す感作性物質のリストをわが国初の試みとして提示した. 2.においては, 吸入性の即時型呼吸器アレルギーをきたす職業性感作物質を予知し, その量-反応(効果)関係を検討して許容濃度設定の基礎資料とするために, Karolらの方法を改良した吸入曝露による感作, 誘発実験装置を作製し, モルモットを用い, 強い感作性物質であるTDIを実験資料とし, 3段階濃度による感作, 誘発実験を行い, その量-反応関係をボディプレチスモグラムによる呼吸曲線の解析, PCA反応, 皮膚テスト等により検討した. その結果, TDIによる感作の程度は感作濃度依存型てあること, 現行の許容濃度0.02ppmでは吸入感作は成立しないが, パッチテストでその皮膚感作が認められること, などが明らかにされ, 感作性物質の予知におけるこの実験系の有用性が確められた. なお, 本研究のために購入, 作製されたクロマトレコーダ, 吸入チャンバー, ボディプレチスモグラムチャンバーはいずれも所定の機能のとおり作動した. 3において, 食鶏およびスターチス(花卉)の感作性が免疫学的に明らかにされ, その許容濃度設定に関する基礎資料が得られた.
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