研究概要 |
本研究では, 1982年に健康状態と生活構造に関する実態を把握した高知県大方町の65歳以上の住民について, 5年後の状況を把握することにより, 健康状態及び生活構造の加齢及び時代的背景による変化を把握するとともに, 健康状態及び早期の死亡に関連をもつ生活構造を明らかにすることを目的とした. このため, 1982年調査回答者の1987年までの死亡状況を調査し, 死亡者と生存者の1982年時点での健康状態及び生活構造を比較検討した. また, 生存者に対して1982年と同一項目による健康状態と生活構造に関する調査を1987年に実施した結果91.2%の回答を得た. そこで, 1982年の健康状態及び生活構造との変化を標準コホート表の方式によって解析し, 健康状態の変化を認めた対象者について1982年の生活構造との関連を検討した. 本研究で得られた主な知見は以下の通りである. (1)早期の死亡は, 年齢要因のほか自覚的健康状態, 日常生活動作能力との関連が大きいが, 就労など社会的役割のないこと, 配偶者がいないこと, 交友, グループ活動への参加が少ないことなどの社会的参加, 便通規則性, 睡眠, 健康診査の受診などの保健習慣も関連することが示唆された. (2)日常生活動作能力は加齢に伴う低下を認め, 年齢一致によっても1982年時点の就労・家庭内役割の有無, 女性でと交友, 趣味, 便通規則性などが関連することを認めた. (3)自覚的健康感は, コホートにおいても, 調査時点間の同一年齢の比較でも良好な者の比率の増加を認め, 1982年の日常生活動作, 就労, 交友, グループ活動参加などが健康感の変化に関連することを認めた. (4)生活構造では, 就労が加齢に伴う減少を認め, 老人所帯の核家族化が進とともに, スポーツ, 趣味, 健康方実践などがコホートでも調査時点間の同一年齢の比較でも増加し, 生きがい, 健康保持への積極的な生活様式の変化が示唆された.
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