研究概要 |
〔報告1〕では有機溶剤の催奇形性や胚毒性を評価する上で重要な胎盤通過性と胎仔移行を調べることを目的とし, ラジオ・オートグラフィによる揮発性物質と代謝物の分離方法を妊娠動物に応用した. 30分後の凍結切片は肺に最も放射活性が高く次いで腎, 脂肪組織, 肝が高かった. 加熱切片では肺, 腎, 肝の活性が高かったが脂肪組織の活性は低かった. 2時間後では肺, 腸管, 肝, 腎皮質に高濃度で凍結・加熱切片の差は顕著でなかった. 胎仔の活性は投与後2時間で最も強く母体の脳と同程度であった. 〔報告2〕は, 催腫瘍性や胎児毒性および催奇形性の疑われている有機溶剤スチレン暴露による次世代影響を行動奇形学の手法を用いて評価した. 特に機能的レベルで影響をとらえるために, 仔動物の発育, 生理運動機能の発達知覚, 情動性, 平衡機能, 活動性, 学習能力, 薬物への感受性等の諸指標について生後1日から成熟年齢に達するまで観察を継続しあわせて神経系各部位のNeurotransmitterの測定を行って, 胎生期スチレン暴露が仔のどのような機能に影響を与えているかを検討した. 結果は生下時体重は300ppm(♂)が最も低く, 差が見られた. 生後発達の指標では, 歯牙出現, 立ち直り反射, 聴覚反射, 棒把持力は, 50ppm暴露群でもコントロール群に比べて遅れが見られた開眼の時期, 背地走性, ピボッティングは300ppm群のみ有意の差が認められた. Open field testにおける情動性も300ppm(♂♀), 50ppm(♀)に差が見られた. 特に暴露群ではAmbulation Rearingの回数が多かった. 平衡機能は300ppm群のみ影響が認められた. 24時間の自発行動は, 暗期, および新奇場面での活動性が300ppm群で有意に高かった. オペラント学習ではCRF獲得過程のみ50ppm, 300ppmの両群ともコントロール群に較べて劣ったが, DRLでは差が認められなかった. 胎生期スチレン暴露は許容濃度に近い低濃度でも仔の発達にDose dependatな影響を与えていると考えられた.
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