研究概要 |
本研究は, 頻度の少ない原因不明疾患の患者発生様式が, 時間空間集積性を有するか否かをみるための統計指標を考案し, その妥当性を検討し, また疫学資料に適用して, 応用上の有用性を明らかにすることである. 1.時間空間集積度指数の考案と検討: 指数を等方的な3次元空間(地域・時間)で定義して, 3種類の距離依存性のモデルを採用し, 空間と時間距離の重みの割合について検討した. 本指数は, 時間を固定すると地域集積性を, 地域を固定すると時間集積性をみる統一的な指標である. また, 本方法を非等質な現実の疫学資料(不ぞろいな市区町村や人口)へ適用する場合は, 対象疾患の暴露人口に比例した患者発生を考慮して行えばよいことを明らかにした. 2.シミュレーションによる指数の統計的性質の検討と検定方式: 空間が等方的な場合について, 5種類の空間と6種類の患者発生規模の全ての組み合わせについてシミュレーションを実施して, 指数の距離依存性などの特徴や, 空間や患者数の増大につれて, 漸近的にX^2-分布に近づくなどの統計的性質を明らかにした. 更に, X^2-近似が成立する場合に十分な精度で巾正規変換が可能であり, 正規分布理論に基づく検定手順が可能であること, また, 正規変量として他の関連因子との相関分析などの多くの用途が可能になると思われる事を明らかにした. 3.疫学資料への適用(川崎病の1977-1984年の全国疫学調査データ): 栃木県と岡山県の2例に本方法を適用して, 時空集積性の有無と強さの程度について検討した結果, 患者数が多い1979, 1982年には強い有意の集積性が共に認められ, 同病原因究明への疫学的知見を加えると共に, 本方法の実地疫学上の有用性をみた.
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