研究分担者 |
島田 悦子 聖マリアンナ医科大学, 医学部・公衆衛生学, 実習助手
高橋 啓子 聖マリアンナ医科大学, 医学部・公衆衛生学, 助手 (90197137)
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 医学部・公衆衛生学, 講師 (90081661)
SHIMADA Etsuko Department of Public Health, At. Marianna University School of Medicine, Assista
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研究概要 |
本研究は動物実験でのガリウムヒ素(GaAs)の生体内動態に関する基礎的研究,そして低レベルのGaAsおよび無機ヒ素暴露に対応できる生物学的モニタリングの確立を目的に実施した. GaAsの生体内動態:GaAsはin vitroでの実験から既存の無機ヒ素化合物に比較して難溶性であった. in vivoの実験から, GaAsは体内でその一部分は溶解して無機ヒ素とガリウムに分離することが明らかとなった. GaAsの消化管および腹腔内での溶解度は尿中ヒ素排泄率から約0.3%未満であったことから, 体内での溶解性は極めて低いことが示唆された. 他方, 体内で分離して生成した無機ヒ素は, そのままの化学形態で臓器・組織に沈着することはなく, その大部分はメチル化され, メチルアルソン酸とジメチルアルシン酸に変換することが明らかとなった. GaAsは難溶性であることから, 他の無機ヒ素化合物に比較して毒性の低いヒ素化合物といえる. GaAsおよび無機ヒ素暴露の生物学的モニタリング:GaAs取り扱い作業者では, 作業後の尿中無機ヒ素濃度は作業前に比較して上昇する傾向が示された. この結果から, 従来では低レベルの無機ヒ素暴露を尿中総ヒ素濃度の測定では評価することは不可能であったが, 尿中ヒ素を化学形態別に測定し, 尿中無機ヒ素濃度の値を用いることにより暴露を鋭敏に判定することを可能とした. さらに本法では, 職業性に暴露されたヒ素(無機ヒ素)と食事由来のヒ素(主に魚貝類;アルセノベタイン)を明確に区別することを可能にしたことから, 従来の方法より極めて精度の高い評価方法を確立できた. GaAs単結晶製造および加工作業では, 軽度のGaAs暴露の存在することは尿中無機ヒ素濃度から判明したが, しかし無機ヒ素暴露のレベルは低いことから, ただちに無機ヒ素による健康障害を懸念する作業状態にないことが明らかとなった.
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