研究概要 |
1 着香料の坑変異原性の研究からレクアッセイが変異原性のみならず坑変異原性のスクリーニングにも利用できるとの確信を持ち, それを実証するために天然添加物20数種についてレクアッセイ, エームステストを実施した. しかし着香料以外では坑菌性を持つ添加物はほとんどなく, レクアッセイが有効に使えないために前述の仮設を補強するデータは得られなかった. 2 数種のお茶の熱水抽出物について坑変異原性を調べた結果日本茶には坑変異原性が強くみられたが, ウーロン茶, プアール茶にはみられなかった. またHPLCによる分画の結果では日本茶の坑変異原性はカテキン類, カフェイン類によるものではないと思われた. 茶葉抽出物の場合もレクアッセイは有効ではなかった. 3 アラニンとグルコースのMaillard反応物はAF-2に対しては変異原性を増強させる方向に, MNNGに対しては抑制する方向に働くことが明らかにされた. しかしその作用機序は不明である. 4 12種の有機ヒ素化合物について, 変異原性および坑変異原性を調べた. レクアッセイでは2種が陽性, エームステストでは全てが陰性, SCEは7種の化合物が陽性, またケルセチンに対しては変異原性の抑制に働くものが3種あった. 5 変異原としてよく用いられる物質に水銀灯照射を行ったところ変異原性が激減するものが多いことが解った. また逆に染髪剤の原料でもある4-nitro-α-phenylenediamineは変異原性が強められた. 6 1-nitro-pyrneの変異原性試験をプレインキュベーション法で行う際にプレインキュベーション液中のDMSOの濃度を下げると変異原性が上昇することを見つけた. これは水に難溶な物質に共通した現象であり, 液中のDMSO濃度が低下することによって細胞壁の脂質に変異原が吸着されるためであると思われた. これは坑変異原性の機構としては今までに提唱されていない物理的な新しい型であるといえる.
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