研究概要 |
ヒト尿中には有用な遺伝標識が多いが, 法医鑑識学の領域ではほとんど活用されていない. これれらの法医学的応用うはかる目的でこの研究が計画された. 現在までに, フコシダーゼ(FUCA1),グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT),α_2HS-糖タンパク質(AHSG)などの遺伝的多型形質が尿中から効率よく証明できることを明らかにした. 尿中に多量に存在しているペプシノーゲンA(PGA)を塩析や各種クロマトグラフィー法により電気泳動的に単一なまでに精製した. この精製PGAをウナギに注射して特異抗体を作製した. 濃縮尿をポリアクリルアミドゲル等電点電気泳動後(IEF-PAGE), 抗PGA特異抗体を用いた免疫染色を施してPGAのアイソザイモーゲン分画(I〜V)が認められるが, 第V分画には遺伝的多型のあることが証明できた. 第V分画には一対の遺伝子によって支配される3種類の表見型が確認され, 相互優性遺伝していることを明らかにするとともに, 遺伝子頻度も調査した. さらに, リボ核酸分解酵素(RNase)のひとつを尿中から分離精製し, RNase1と名づけた. RNase1は子量約17,000の糖タンパク質であり, ピリミジン特異性を示した. ヒト血清をIEF-PAGE後, 作製した抗RNase1特異抗体を用いて免疫染色を施すと, 血清RNase1には約6または12個のアイソザイムが認められた. さらにRNase1の泳動パターンは3種類の型に分類され, これらは優劣のない常染色体性の2個の対立遺伝子によって支配されていることを, 家族調査の結果, 明らかにし, これらの遺伝子頻度についても調査した.
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