研究概要 |
前年度で得た知見をもとに, 組成(両性担体の種類と尿素濃度など)や厚さを変更したゲルを使用し, 等電点電気泳動法と免疫ブロッティング法により, 種々の血清タンパクの変異を調べた. 厚さ約0.1mmの超薄層ゲルは, TF型やGC型の他, PI型の検出にも非常に有用であった. 特にゲル濃度を高くする(T=10%, C=3%)ことで, PI型のM1M3やM2M3の分離が明瞭になった. この場合, 全泳動時間は約3時間30分で, 特に時間を延長させる必要はない(電圧1500V). BF型は, 等電点電気泳動によりサブタイプに分類することができた. 日本人集団では, F成分が2種類のサブタイプ(FAとFB)にわかれた. この検査では, ノイラミニダーゼ処理した血清試料を, 10%ショ糖, 1.5M尿素を含むゲル(PH3-10)を使用すると判別が容易であった. 腎疾患患者についてBFサブタイプを調べたところ, 膜性腎症とFAおよびFBに相関がみられた. 次に, C9とB1Hのアロタイプの検索を行った. C9は尿素を含むゲルを使用するとバンドに分かれるが, 尿素濃度と両性担体のPHレンジの選択に検討の余地が残されている. これまでは主にワイドPHレンジゲルを使用してきたが, 低PH域を強化したゲルの使用も考慮する必要がある. B1Hのパターンの解析は容易ではない. 高濃度の尿素を含むワイドPHレンジのゲルでバンドに分かれるが, ゲルの陽極域と中央域にそれぞれバンド集団があらわれる. 個体差がみられるのは中央域のバンドであり, 現在この遺伝性を分析している. 以上の事項を含め, 現時点までに行った主な研究報告は次の通りである. (1)日本人, フィリピン人およびミクロネシア人集団におけるPLG型, IF型, BF型およびC7型について. (2)C7サイレント遺伝子について. (3)BFサブタイプの検出法. (4)腎疾患患者におけるC4型およびBF型サブタイプについて.
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