研究概要 |
虚血性急性腎不全における腎機能障害への予防効果について, 抗利尿ホルモン, アルドステロンなどによる酵素活性化についての検討を行なった. 細胞のactivityを示すと思われる酵素にNa-K-ATPaseがありこの酵素活性を, 糸球体, 尿細管の各部位において測定した. Na-K-ATPaseを刺激するホルモンとしてはアルドステロンが知られているが, 抗利尿ホルモンが影響を持つか否かは知られていない. そこで抗利尿ホルモンを7日間投与し, 抗利尿ホルモンのreceptarが存在すると思われている尿細管について, 酵素活性の変化について検討した. Na-K-ATPase活性は, 皮質集合尿細管において3日目ごろより有意の上昇がみられ7日目まで上昇が認められた. 従って抗利尿ホルモンは, 皮質集合尿細管のNa-K-ATPaseの活性化ホルモンと言うことができる. カリクレイン・キニン系は腎での血流量, Na排泄を調節するホルモンとして重要である. 最終産物のキニンの量を決定する因子としてキニンを破壊するキニナーゼという酵素が重要と思われている. キニナーゼは, 近位尿細管で多量に認められており, キニンの作用のある遠位では少量認められている. アルドステロンを投与すると髄質部のキニナーゼの低下が認められた. したがってアルドステロンは, キニナーゼの活性を低下させることによりキニンの作用を増強させる方向に働いていると思われる. 抗利尿ホルモンや, アルドステロンの投与により, Na-K-ATPase活性の亢進, キニナーゼ活性の低下などを介し, 虚血時の腎機能の保持に役立つ可能性が考えられる.
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