研究概要 |
生理的な免疫応答は, 主要組織適合抗原(MHC)を介した自己認識機構を基盤として成立している. 一方, 自己リンパ球混合培養反応(AMLR)は, "免疫サーキット"や"フィードバック制御機構"を反映しているin vitroの反応であり, 自己免疫疾患ではAMLRに欠陥があることが知られている. 自己免疫疾患の病因を探るため, このような自己認識に関わるT細胞をクローン化してその免疫調節作用を検討した. その結果自己反応性T細胞クローンMTC-4は, 状況に応じて相反する二つの免疫調節作用を発揮するという特異的な細胞であることがわかった. 1.MTC-4のヘルパー機能:MTC-4は自己非T細胞と共に培養するとその刺激を受けて増殖すると共に, 非特異的ヘルパー因子を放出して, 自己のみならずアロのB細胞を抗体産生細胞に分化させる. この因子は, 大型B細胞(活性化B細胞)にも小型B細胞(静止期B細胞)にも作用して抗体産生を促した. 2.MTC-4のサプレッサー機能:MTC-4を自己非T細胞にPWMを加えて共に培養すると, 抗体産生は見られず, PWM短時間刺激を受けた自己非T細胞がMTC-4にサプレッサーとして機能するためのシグナルを送っていることが判った. ヘルパー機能と異り, サプレッサー機能はMHC拘束が見られた. すなわちPWMで前培養した自己非T細胞で刺激されたMTC-4は自己B細胞に対しては, サプレッサーとして働きアロB細胞に対しては, この抗体産生をほとんど抑制しなかった. このように自己反応性T細胞クローンは, 静止期にあるB細胞には, その抗体産生を促して抗体のレベルを引き上げ, 活動期にあるB細胞に対しては逆に抗体産生を抑制するがこの際, 自己反応性T細胞と接触しない多くのB細胞に対してはヘルパーとして作用しつづける. この調節作用の不均衡が自己免疫現像につながるとすれば, 今後自己免疫疾患患者よりのT細胞クローンの樹立とその解析は不可避と言えるだろう.
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