研究概要 |
人工臓器・血漿交換・カテーテル類に用いられる合成材料は, 血液との接触によって血中微量活性物質を増加させる. これに関する研究は比較的多いが, それが生体にどのような影響を与えるかについての研究は少ない. 本研究の目的は, 単に(1)生理活性物質の生成だけでなく, それが(2)血球系に与える影響, (3)生体機能に与える影響についても明らかにすることにある. 1.生理活性物質の生成. 合成材料との接触により, 活性化補体・プロスタグランディン・トロンボキサン・ロイコトリエンなどが増加する. その合成は合成材料の種類によって差異があり, 一般的にはセルロース系の材料は生成刺激作用が強い. また同じ材料でも, 用法により作用の程度が異なる. 2.血球系への影響. 活性化補体の増加に伴い, 白血球数, 白血球の補体レセプター・活性酸素生成, リンパ球サブセットに変化をきたし, これらの変化は材料の種類によって差異がある. 血小板数・血小板放出物質にも変化が認められるが, これらの変化は材料と血小板との直接作用による. 3.生体機能への影響. 補体活性化作用の比較的強いセルロース膜と, この作用を減弱させたセルロース膜によりダイアライザーを作成し, 3カ月間double blind,cross-over試験を施行した. 動脈血酸素分圧, 透析アミロイドーシスの原因物質として注目されているβ_2ミクログロブリンは両者には差異だ認められなかった. 初年度は, この試験を無症状の安定透析患者に施行したが, 材料間に差異は認められなかった. 次年度は低血圧・不整脈などの有症状の患者に施行したが, 同様に材料による差異は認められなかった. 以上, 合成材料の中には生理活性物質の生成を刺激する材料があることを明らかにした. これらの生理活性物質増加は, 生体機能に影響を与える可能性があり, 短期的には血球系でそれが実証された. しかし, 長期の臨床症状との関連は証明されなかった.
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