研究概要 |
胆汁中胆汁酸ミセル構造の概念は従来人工モデル胆汁を利用して議論されているが, 今回我々は簡易限外濾過法を利用してヒト胆嚢胆汁と人工モデル胆汁のミセル分子サイズを検討し, 下記の成果を得た. 1.胆汁中胆汁酸ミセルの生体内存在様相 胆汁中胆汁酸が形成するミセルは分子サイズが均一でなく, 胆嚢機能が正常な胆嚢胆汁では胆汁酸の2/3が分子量1万以上の大分子型に, 1/6が分子量1万から1千の中分子型に, 残る1/6が分子量1千以下の症分子型で混在し, それらは互いに平衡を維持している. またミセル分子サイズは胆汁酸の化学構造, つまり胆汁酸ステロイド骨格の水酸基数と配位, 側鎮抱合アミノ酸の種類に影響され, 大分子型ミセルは水酸基数が3個より2個, β位よりα位, 抱合アミノ酸のカルボキシル基が2個よりも1個の場合に形成されやすい. 2.低分子サイズミセルの機能 胆汁中リン脂質は常に大分子型ミセルに組込まれて存在し, 胆汁酸構成の変化に影響されない. 一方, 胆汁中コレステロールは主として大分子型ミセルにより溶存され, 一部が中小分子型による. したがって低分子サイズミセルのコレステロール溶存作用は補助的役割にとどまる. 胆汁中Caの溶存は主として大分子型ミセルよるが, 一部は中小分子型も関与する. しかし低分子サイズミセルの役割は稀薄胆汁の際に増大する. 3.低分子量イズセルと胆道疾患 胆石症での胆嚢胆汁はしばしば稀薄化するため, Ca溶存は低分子量サイズミセルによる比重が増加する. しかしその溶存容量には限度があるため, 胆汁中Caは不溶性Ca塩を形成しやすい条件下にあり, 胆石石灰化の一要因である. また胆石溶解のCDCA療法とUDCA療法では胆汁中ミセルの分子サイズ分布が異なり, 溶解機序は同一ではない.
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