研究概要 |
近年諸種の検査法の発達により腸疾患の成因や病態が解明されつヽある. しかし, 腸疾患の診断には内視鏡のような特殊な技術を要するものが多く, 血液生化学的な肝機能検査に類するものはない. そこで私は肝汁酸をパラメーターとして, 血液生化学的に腸疾患の病態を鑑別できる方法を確立することを目標とした. その結果以下の方法を確立し得た. 1)方法:血中総胆汁酸を酵素蛍光法で測定する. 一方, 血中胆汁酸分画を高速液体クロマトグラフィーにより測定する. 具体的には(1)血中胆汁酸分画を測定する, (2)早期空腹時にUrsodeoxycholic acid 300mgを経口投与し, 血中総胆汁酸を0, 30, 60, 120分後に測定する. 2)本診断法の原理:上記(1)により腸内細菌過剰発育群を診断できる. なぜなら腸内細菌が増殖すると細菌による脱抱合により遊離型胆汁酸, また7.α脱OHによりdeoxycholic acidが生成され, 血中にこれらが増加する. 上記(2)により「吸収不良」があるばあいには, 血中総胆汁酸濃度は上昇せず, 濃度経時曲線は平低下する. 3)成績:(1)UDCA服用量とArea Under Curveは0〜900mgまでr=0.97(p<0.01)の相関を認めた. (2)各種腸疾患50例中22例に遊離型分画の〓増, 16例にdeoxycholic acidの相対値増加を認めた. (3)腸疾患14例中8例に血中濃度曲線の平低下を認め, シリング試験と相関した. (4)分画試験と負荷試験を20例に施行した結果, 分画異常(遊離型, deoxycholic acid増加)(細菌過剰増殖), II型負荷試験異常(吸収不良), III型分画, 負荷試験ともに異常, IV型 正常群に分類できた. 4)結論:血清胆汁酸分画測定により, 腸内細菌過剰発育症候群を診断し, 経口胆汁酸負荷試験により腸管からの吸収不良症候群を診断することが可能になった. 両試験を併用すれば, 両症候群の鑑別診断が可能になった.
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