研究概要 |
小さな肝癌生検材料でrasおよびmycの発癌遺伝子の発現の同定を行うには, In situ Hybridizationが適しているが, 実際にこの方法での検索は少く, 最初に予備実験として再生肝における発癌遺伝子の発現について検査したこの実験の結果In situ Hybridization法によっても発癌遺伝子の発現の検索は可能となった. 次に小さな肝癌についてrasおよびmycの発癌遺伝子について検索すると生検例中明らかな癌にはras遺伝子の発現の増加を見たが, hyperplastic noduleの例では発癌遺伝子の発現の増加は見られなかった. 肝癌部での発癌遺伝子とウイルス(HBV)DNAの組み込みとの相関をみるため, HBVの全DNAプローブの他にsubgenomicプローブ(S-gene, C-gene, X-geneのそれぞれの領域とのみ結合するプローブ)を作製した. これらのプローブを用いて検索した結果では肝癌部において発癌遺伝子発現とHBV-DNA組み込みとの相関はみられなかった. 肝癌部でのras遺伝子の点変異(one point mutation)を検索するため, 正常ras遺伝子DNA及び, 点変異ras遺伝子DNAを合成し, これらをプローブとして検索した結果, 肝癌部ではras遺伝子の点変異が明確に生じているとは言えなかった. しかしながら大腸癌ではras遺伝子DNAの12番目又は13番目に点変異が生じていることが認められた.
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