研究概要 |
造血因子であるコバラミンの消化吸収機構を以下のごとく検索した. 1.トリプシン以外にエラスターゼ及びキモトリプシンを用いたR蛋白への膵酵素による変性作用を内因子-コバラミン受容体アッセイ方法を利用して検索した. 変性作用の程度はトリプシン, キモトリプシン, エラスターゼの順であり, R蛋白より遊離したコバラミンは内因子及び内因子-コバラミン受容体に移動する事を明らかとした. 2.R蛋白の役割として, コバラミン類縁体が内因子-コバラミン受容体に直接附着するのを阻止する働きがある事を明らかとした. 3.腸管内に存在するコバラミン類縁体の1つコビナマイドを悪性貧血患者の異常骨髄duテスト値に用いると, du値の改善はみられぬ事を明らかとした. 4.コバラミン及び葉酸欠乏状態検出にduテストは有用であり, MTX(methotrexate)で処理すると, 骨髄duテスト値及び貧血を用いたmicro duテスト値に差が出る事, 又folinic acid添加により異常du値が改善する事を明らかとした. 5.5-FUを使用しての化学的葉酸欠乏状態を作成. 5-FUに対する骨髄duテストとmicro duテストとの差を比較した. 以上よりこの研究では内因子-コバラミン受容体アッセイ及びduテストを用いて, R蛋白, コバラミン類縁体及び内因子-コバラミン受容体のコバラミン吸収への関与を明らかとした. 更にMTX及び5-FU使用による葉酸欠乏状態とコバラミン欠乏状態との関連も検索した.
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