研究概要 |
ヒト劇症肝炎においては血漿フィブロネクチン(FN)の低下が認められ、網内系機能の低下に寄与し、合併症の出現、予後に影響を与える可能性がある。私達は先に、グラクトサミンにより惹起したラットの肝不全において、FN補充は肝障害および生存率に対して改善効果を有することを報告した。このFNの効果の機序として、非特異的オプソニンとして網内系機能を賦活することがまず第一に考えられるが、FNが線維芽細胞におけると同様に増殖因子として作用する可能性を考え、初代培養ラット肝細胞を用い、FNおよびFNフラグメントの肝細胞DNA合成に及ぼす影響を検討した。ラット肝細胞を無血清培地で培養した場合,インスリン,EGFの存在しない場合は、FN添加によるDNA合成促進効果は認められなかったが、インスリンあるいはEGFあるいはその両者の存在下で10FN添加はラット肝細胞のDNA合成を促進した。FNを除去した牛胎児血清を含む培地でラット肝細胞を培養した場合は、インスリン、EGFの存在の有無にかかわらずFN添加のDNA合成促進に対する効果は認められなかった。FNフラグメントめを用いた実験では、ラット肝細胞のDNA合成を促進するフラグメントと抑制するフラグメントが存在する可能性が示唆された。これらの結果より、FNおそらくcompetence factorとして肝細胞増殖に作用するものと考えられるが、その効果は、血清中に含まれる他の同様な因子に比べ弱いものと考えられる。また、FNフラグメントが生じるような状態では、FNフラグメントにより肝細胞増殖が抑制される可能性が考えられる。
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