研究概要 |
慢性活動性肝炎の免疫調節細胞機能を解析し, 次の成果を得た. 1.本症の免疫調節細胞系の機能状態を把握する目的で, 調節系の中心である末梢血リンパ球T細胞の機能を分析した. その結果, 本症では明瞭なサプレッサーT(sT)細胞機能低下とともにインターロイキン2(IL-2)反応能の低下が認められること, 一方, IL-2産生能には明らかな異常は認められないことを示し, 免疫調節細胞とくにT細胞の機能異常の性状を明らかにした. 2.このT細胞機能異常が本症の病態発生に及ぼす役割を解明する目的で, 平均40日間のステロイド治療を施行し, 肝炎のステロイド効果とsT細胞機能との関連を検索した. その結果, 肝炎の改善が得られた治療有効群ではsT活性も正常化したのに比し, 治療無効群では活性の変化が認められないことを示し, sT細胞機能が本症の病態形成に中心的役割をはたしていることを明らかにした. 3.本症におけるsT細胞機能低下の機序を解明する目的で, マクロファージのプロスタグランジンE産生能を測定し, これが有意に低下していることを示した. T細胞のIL-2産生能は異常ないので, T細胞のIL-2反応能低下とマクロファージの機能異常がsT細胞機能低下の一因となっている可能性を指摘した. 4.T細胞機能に対するステロイド効果の細胞生物学的機構を解明する目的で, 治療前のT細胞機能に対するステロイド添加効果を検索した. その結果, prednisolone(1μg/ml)添加により, 低下が認められたsT細胞活性およびT細胞のIL-2反応能が正常化すること, これはステロイド有効群のみに認められ, 無効群ではみられないことを示し, ステロイド治療効果の予測が治療開始前に可能であること, 本症のステロイド効果の発現機序がT細胞に対するIL-2反応能の改善を介したsT細胞機能の正常化によるものであることを明確にした. 以上の研究成果から, 慢性活動性肝炎の本態は免疫調節細胞の機能異常であることを明らかにした.
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