研究概要 |
教室で樹立しえたウッドチャック肝細胞癌培養株(WH257GE10:腫瘍倍加時間40時間)の150代目を用い、組み込まれた特異なclusterすなわちAC repeat sequenceおよびAT repeat sequenceと再編成なしに組み込まれていたウッドチャック肝炎ウィルスの約4分の1に相当するゲノムをサザン・トランスファー・モレキュラー・クローニングによって抽出し、プラーク培養により大量化した。このクローニングしえたDNAをスーパー・コイル状のプラスミッドDNAでトランスフェクトレ、クロランフェニコール・アセチールトランスフェラーゼ(CAT)システム内に挿入し、当該DNAがEnhancer・elementととしての性格を有するか否かを検定した。作製した当該DDAは前述の3つの領域すべてを含むプラスミッド109-2、AC clusterとWHVDNAの2つを含む107、AT clusterとWHVDNAを含む108-2、各々1つずつからなるプラスミッド123-8,124,125-4の計6つであった。 すべてのプラスミッドがEnhancer活性を示したが、活性の強さはそれぞれ異なっており、もっとも強い活性を示したプラスミッドは107であり、以下124,123-8,125-4,108-2,109-2の順位であった。すなわち3つの領域すべてを含むプラスミッド109-2がもっとも弱い活性を示したが、このことは、ときにある部分がEnhancer活性に対して抑制的に働く場合もありうることを示したものであると思われる。さらにこれら活性を示したDNAプラスミッドが本来の培養株WH257GE10と子宮頸癌由来培養株HeLaのどちらにおいて、より強い活性を示すか否かをみた結果、むしろ後者の細胞においてより強いEnhancer活性を示した。Enhancer活性はときに種特異性を超えて作用するといわれてはいるが、さらに今後検討を要する課題である。
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