研究概要 |
肝癌における癌遺伝子および増殖因子レセプターの存在様式を検討した. ヒト肝癌培養細胞株PLC/PRF/5およびHep G2を用いて, ^<125>Iで標識したEGF(epdlermal growth factor),insulin,IGF-I(insulin-growth factor-I)によるラジオレセプダーアッセイを行った. その結果, 両細胞株ともEGFは高い結合率を, insulinは低い結合率を示した. IGF-IはPLC/PRE/5細胞においてHep G2細胞より有意に高い結合率を示した. 次にこの両細胞を用いてdot blot法によりDNAおよびmRNAをントロセルローズ膜に固着させ, ^<32>Pで標識した12種類の癌遺伝子プローブとハイブリダイゼイションを行った. その結果, 両細胞株とも12種類の癌遺伝子が全て発現しており, そのうちablとfesのmRNAが比較的増加していたが, 肝癌細胞に持異的ではなかった. 培養液中にEGFを添加したところ, 肝癌細胞のDNA合成は促進されたが, 癌遺伝子発現に変化はなかった. タンパクレベルの検討では, 上記2種類のヒト肝癌細胞株と肝癌手術材料を用いて癌遺伝子産物と増殖因子関連蛋白の免疫組織化学的検討を行った. その結果, 肝癌10列中4列でEGFレセプターが細胞膜に染色され, 癌部で陽性の列では非癌部でも陽性であったが, 染色度は癌部の方が非癌部に比し強い傾向にあった. 培養細胞株でも膜型に弱陽性であった. myc産物は肝癌10列中2列で核に陽性であり, 培養細胞でも同様であった. ras産物は培養細胞でのみ細胞質に陽性であった. EGF,TGFのが陽性の列はみられなかった. 以上より肝癌に特異的に発見される癌遺伝子はなく多種類の癌遺伝子が多段階発癌過程に関与している可能性が示唆され, また増殖因子については自己分泌の可能性は否定し得ないが, 今回の成績からは考えにくかった. EGFレセプターが癌化に伴い変化する可能性が考えられた.
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