研究概要 |
1.肝癌患者血清中の抗核抗体(ANA)の出現: 肝癌患者血清には種々の自己抗体が出現するが, 中でも蛍光抗体法による抗核抗体(ANA)の出現頻度は高かった. 2種類の培養癌細胞すなわち肝癌由来細胞PLC/PRF/5, 喉頭癌由来細胞Hep-2を基質とした蛍光抗体間接法によると, 肝癌患者は166例中36例(22.5%), 慢性肝炎・肝硬変は62例中12例(19.4%), 正常者235例中1例(0.4%)であった. 非癌細胞BHKを基質とした場合の肝癌患者のANA出現率は23.1%であり有意に高かった. また抗体価をみると非癌患者の上限は320倍であったが, 肝癌患者のそれは640倍〜5120倍が31%を占めていた. その蛍光は斑紋型, 核小体型が多かった. また肝癌患者血清中にはSLE患者の抗核抗体とは反応しないものがみられた. すなわち肝癌患者血清中には癌細胞核と特異的に反応するANAが存在することが判明した. このANAとProliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA抗体)との異同が検討されなければならない. そのためにPCNAを精製し, 抗体の測定を試みた. 2.PCNAの精製: 子牛胸腺を抗原源とし, affinity chromatography法を用いてPCNAの精製を試みた. すなわち, 抗PCNA抗体陽性SLE患者血清よりIgGを分画後, ウサギ腎より作製した抗ENA抗体吸収用affinity columnで抗PCNA抗体以外の抗ENA抗体を吸収し, これを担体ゲルとcouplingさせPCNA affinity columnとした. 子牛胸腺アセトン粉末をPBSでホモジナイズし, その上清を水に対して透析し, 沈澱物を粗PCNA抗原とした. この抗原をPCNA affinity columnに通し, 溶出分画をPCNA分画とした. 本法により得られた抗原は分子量29kdで, イムノブロット法及びEIA法で抗PCNA抗体陽性患者血清とのみ反応がみられた.
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