研究概要 |
ラット部分肝切除後の肝再生の系において, 1.prctooncogene(onc)mRNA発現の経時的変化, 2.estrogen(E),vitaminD_3(VD),epidermal grovth factor(EGF)に対するreceptor(R)の動態, 3.E,VD,EGF投与による肝再生, oncに及ぼす影響を検討した. 1.肝切除後fosは早期の30分より上昇, 45分にピーク(2.5倍)を認め, 60分後には前値に復した. mycも早期より上昇し, 3時間後にピーク(3倍)を認め, 6時間後に前値に復した. Ha-rasは12時間後に明らかな増加を示した. ertAは有意の変動を示さなかった. mycについてはin sizu hybridizationにより3時間目の細胞質に, myc蛋白はABC法により6時間目の核に認めた. 2.肝切除後血中estradiol(E_2)は上昇し, 3時間後にピークとなり, それに一致してFRの低下は最低となった. VDRは切除前には検出されなかったが, 肝切除後6時間をピークとした発現を認めた. これらoncあるいはER,VDRの一過性ではあるが一連の推移は, いずれもDNA合成のピークである肝切除後12時間前にみられる現象であり, 肝再生という制御を受けた細胞増殖において, それぞれが果たす役割を考えさせる上で興味深い. なかでもmycとVDRの平行した推移はManolagasらのリンパ球, 線維芽細胞での報告にみられるように肝細胞においても両者が深く関連している事を示唆させる成績である. 3.Eの肝再生に及ぼす影響をみるため肝切除直前にE_2投与した群ではERはすでに1時間後に最低となり, その後も比較的長時間低値が持続し, DNA合成の若干の増加をみたが, 1週間後の肝重量や肝再生率には影響を及ぼさなかった. 培養肝癌細胞でのEGFの産生やEGFRの存在は明らかにしているが, 肝再生での検討ならびにVDの肝再生に及ぼす影響の検討は, この期間内には明らかにすることはできず, 今後に残された課題である.
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