研究概要 |
気管支喘息をはじめとして肺のアレルギー疾患において肥満細胞(MC)は中心的役割を担っているが, ヒト肺内MCの起源やその増殖および分化に関しては殆ど分っていない. 一方, 気管支喘息, 過敏性肺炎, サルコイドーシスおよび特発性肺線維症などの肺疾患ではその気管支肺胞洗浄(BAL)液中にMCないし好塩基球の増加していることが知られており, それらの疾患ではMCの前駆細胞あるいは増殖因子などの増加が推測される. そこでこれら疾患のBAL細胞を採取して培養し, 種々の増殖・分化因子の影響およびBAL液中の増殖因子の存在を検討し以下の結果を得た. 使用した培地はRPMI+10%牛胎児血清およびRITC55-9無節制培地である. 1)PHA刺激ヒトリンパ球培養上清をDEAEで部分精製したconditioned mediumの添加によりMCは非添加に比し約2倍増加した. (n=20, p<0.05)これらは殆どAlcian blue陽性. Safranin陰性の粘膜型MCであり, 約2週間しか維持できなかった. 2)ヒト胎児肺由来線維芽細胞(Fb)をfeeder layerに用いるとSafranin陽性の結合織型MCが2倍に上昇し, ヒスタミン含量(H)が3〜5倍に上昇する例があった. 3)recombinant interleukin(rIL)-3+rIL-4の組合せで対照に比し約2倍のMCが得られたがHは変化しなかった. (n=7) 4)神経細胞増殖因子および線維増殖因子の効果は認められなかった. 5)メチルセルロースを用いてcolony形成を行ったが, 有意のコロニーは得られなかった. 6)マウスIL-3依存細胞株32Dclを用いてBAL液中のIL-3様活性を測定したがいずれのBAL液中にも活性は認められなかった. 以上の結果より, BAL細胞中にはT細胞因子Fbにより粘膜型から結合織型MCにphenitypic changeするMCの存在が示唆され, 更なる検討を要するものと思われた.
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