研究概要 |
上気道の調節系と肺胸郭系の調節系とは互いに影響しあい, 呼吸器全体の調節機構が成立っている. しかし呼吸運動に伴う上気道の動態, 上気道調節に関与する因子について不明な点も多い. 初年度には, (1)麻酔成犬における上気道と下部気道を含む肺胸郭系の分離モデルを作製し, (2)下部肺胸郭系に吸気抵抗を負荷した場合の上気道圧-気流速度関係, 及び(3)高炭酸ガスや低酸素ガスを負荷し, 化学受容体を介し呼吸中枢を刺激した時の上気道圧-気流速度関係を得た. 本研究により, 肺胸郭系への機械的負荷で呼吸中枢を刺激しても, 炭酸ガスや低酸素ガスで化学的負荷で呼吸中枢を刺激しても, 負荷量依存性に上気道圧-気流速度曲線は上方へ偏位し, 上気道抵抗は低下した. 次年度には, 同じ麻酔成犬モデルを使い, (4)下肢筋を支配する大腿神経, 座骨神経を電気刺激し下肢筋運動させた時の上気道開大筋の一つである後輪状破裂筋及び鼻翼筋の筋電図を求め, 更に(5)上気道開大筋の一つであるオトガイ舌筋を直接電気刺激した時の上気道抵抗と刺激周波数との関係を求めた. 次年度の研究より, 上気道閉大筋の活動度は呼吸筋以外の骨格筋からの求心性活動が高まるに伴ない増加し, また, オトガイ舌筋緊張が上気道開存性に重要であることが明らかとなったる. 近年, 上気道機能調節異常による閉塞型睡眠時無呼吸症候群が臨床的に注目されているが, 本研究はその病態の解明に貢献するだけでなく, オトガイ舌筋電気刺激法が本症候群の治療に結びつく糸口を与えたと言える.
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