研究概要 |
1.自然界に存在する主な昆虫の種類と発生匹数の季節変動;一年を通してライトラップによる昆虫の捕獲及び目測観測により匹数を記録した. これらの方法によると, 蝶・蛾・トビケラ・ユスリカが, 自然環境に最も多く存在する昆虫であり, 気管支喘息の発症頻度の高い5月〜6月の春期と9月〜10月の秋期にその発生のピークを認めた. 2.上記昆虫抗原に対する気管支喘息患者の皮内反応陽性率と特異的IgE抗体の検出率;すでに報告したごとく, 鱗翅類に属する蝶と蛾はほぼ共通抗原性があり, 蝶・蛾・トビケラの抗原性は翅に存在することを明らかにしているので, 蝶・蛾アレルギーはカイコ蛾翅抽出液を用い, トビケラアレルギーはオオシマトビケラ翅抽出液を用いて検出した. ユスリカについては微小昆虫であるためか, 翅を含んだ全虫体抽出液が検出用アレルゲンとして適当であった. 昆虫を取扱う職業歴を持たない一般の気管支喘息患者56例のうち, 69.6%, 53.6%, 57.1%がそれぞれカイコ蛾翅, トビケラ翅, ユスリカ全虫体抽出液に対して皮内反応陽性を示し, 皮内反応陽性を示した患者のうち少なくとも2/3にそれぞれの昆虫特異的IgE抗体を検出した. 3.免疫化学的測定法による大気中に浮遊する直径10μm以下の昆虫抗原量の測定;気道内に吸入されヒトを感作するアレルゲンの大きさは, 流体力学的に直径10μm以下のものであるとされている. 10μm以下の粒子を捕獲できるエアサンプラーを用いて大気中のアレルゲンを採集・抽出し, RAST inhibition testを用いて免疫化学的に昆虫抗原量を測定した. 昆虫の発生匹数のピークと同様に春と秋にピークがみられ, 殊に秋には最高18.19ng/m^3のユスリカアレルゲン(<10μm)を検出・同定し得た. 4.今後の課題;昆虫アレルギーの正確な診断と治療の為には, 今後上記昆虫間の交叉反応性の検討が必要である.
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