研究概要 |
間質性肺疾患においては, 組織の障害や線維化の過程において, 肺胞マクロファージ(AM)が重要な役割を演じていることが明らかになりつつある. AMは血中由来の単核球が肺局所で増殖分化して形成されるが, AMの増殖機序は明かではない. 本研究においては, 間質性肺疾患である特発性間質性肺炎(IPF)におけるAMの増殖機序を研究する目的で, 細胞分裂周期に同調して表現されるトランスフェリンレセプター(TFR)について検討した. 健常人の喫煙者群では非喫煙者群に比べ, TFR陽性AMの比率が低下し, 細胞表面上のTFRの数は減少し, 親和性は上昇していた. IPFでは, 非喫煙者においても, TFR陽性AMの比率が正常人に比べて低下し, 細胞表面上のTFRの数は減少し, その親和性は, 逆に上昇していた. AMの活性化のTFRの性状に及ぼす影響を検討するために, LPS PMAγインターフェロンでAMを刺激したところ, 何れの刺激によっても細胞表面上のTFRの数の減少と, 親和性の上昇を認た. 増殖しているリンパ芽球と腫瘍細胞K562のTFRは高親和性であり, IPFのAMは, TFRの性状からみて活性化され, 細胞分裂が亢進していることが示唆された. IPF患者のAMのTFRの鉄飽和トランスフェリン(TF)とアポトランスフェリン(apoTF)に対する親和性を比較したところ, TFよりapoTFに親和性が高い症例が見いだされIPF患者のTFRの構造の変化の存在が示唆された. IPF患者のTFRの遺伝的変化の可能性をTFR遺伝子のcDNAを用いたノーザンブロッティングで検討したが, mRNAの大きさでみる限り正常人と相違は見いだせなかった. AMのTFRと線維芽細胞やリンパ芽球などの分裂している細胞に表現されているTFRの間にもmRNAの大きさでみる限り相違はなかった. 通常の方法ではTFRが証明できない単球においても, ドットブロッティングで検討すると少量ではあるがTFRのmRNAが検出され, AMによるTFRの表現は, 成熟過程における量的な変化と思われた.
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