研究概要 |
Rimmed vacuole(RV)を伴う遠位型ミオパチーは近年特に我国で注目されている筋萎縮症である. 通常20才代で発症, 下肢遠位部に始まり徐々ではあるが常に進行性である. 本疾患の最も顕著な筋病理組織像である. 即ち, 酸性ファスファターゼに濃染する空腔の存在であり電顕的にはautophagic vaculeの一種と考えられる. またマクロファージその他の細胞浸潤を伴はず筋線維の壊〓両生像は殆どみられない. 本症に対する治療法は未だ開発されていない. 我々は本症のモデルとしてラットに大量のクロロキン(CQ)を連日腹腔内に投与する事によりクロロキンミオパチーを作成した. クロロキンミオパチーラットは体重は減少し, ヒラメ筋の〓重量は低下し全例RVの形成を認めた. クロロキンミオパチーに認められたRVは遠位型ミオパチーの場合と同様に酸性フォスファターゼ活性に著明に亢進し, 生化学的にはリソゾーム酵素特にカテプシンBjL活性の上昇が顕著にあった. 此等の所見は本質的にRVをイキラ遠位型ミオパチーの組織学的所見に一致する. そこでシステインプロテアーゼ(カテプシンB, Lはこれに属する)の特異的阻害剤であるエポシコハク酸誘導体ESTを経口投与し, クロロキノミオパチーの予防並びに治療実験を行った. 即ちCQを連日腹腔内に50mg・kg/日投与すると同時にESTを10μg/kg/日の割で経口投与した. 8週間後CQ+EST群はCQ単独群に比しヒラメ筋の〓重量は, P<0.05で有意差を示し, 組織化学的には酸性フォスファターゼは著明に抑制されリソゾーム酸素活性もほぼ正常値を示し空腔も殆ど認められなかった. 次にCQを8週間投与しクロロキンミオパチーを作成した後更にCQ単独投与群とCQ+EST群に分け5週間投与を行った結果体重, ヒラメ筋の〓重量, リソゾーム酵素共に著しく改善し空腔形成も著しく抑制された. 以上の事からクロロキンシオパチーのRV形成筋萎縮にカテプシンBjLが関与している事が明らかになった. クロロキンミオパチーの予防, 治療実験から今後空腔を伴うミオパチーの治療法としてESTが有効であると思われる.
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