研究概要 |
1.血管壁厚の超音波計測に関する検討 欠陥壁の物性的硬さの評価に必要な欠陥壁の厚み情報を, 血管壁エコー波形の信号処理により高精度に産出する手法を検討した. 手法として, ケプストラム法, ケプストラム平均化法, スペクトルディップ法などを提案し, これらの算出精度を計算機シミュレーションとin vitro実験で比較検討し, スペクトルディップ法が簡便性と精度に最も優れ, 周波数5MHzまで, 最小検出厚み0.3mm, 厚み測定精度3μmを達成できることを示した. 2.血管内留置型超音波トランスデューサの開発 血管内から大動脈各部位の局所的硬化度を計測できる血管内留置型超音波トランスデューサを開発した. 超音波振動仔, 超弾性合金腺, 血左側定用カテーテルから構成されており, 硬化度測定に必要な血管径, 拍動性径変化, 壁厚, 血左波形が同計測可能である. 動物実験を行い, 胸部大動脈から腹部音動脈末梢側に至り血管弾性率は3〜5倍にも著増し, その大半が血管壁の材質的硬さの増加に起因していることを明らかにできた. 3.血管弾性率の臨床計測 同一年齢分布(40〜60歳)の健常者707月, 冠動脈疾患患者317月, 高血圧症患者367月を対象に, 腹部大動脈の圧力弾性率を無侵襲法で計測した. 健常者に比して圧力弾性率は冠動脈疾患群で, 1.8倍, 高血圧症群で1.9倍と, 明らかな有意差が認められ, 本計測法の有用性を示し得た. 4.今後の研究の転回 侵襲的ではあるが精密検診用のカテーテル検査法のひとつとして血管内超音波トランスデューサの臨床的実用化を図ること, および加齢に伴う動脈硬化症が壁厚の増加と壁の物性的硬化のいずれに起因するかなど動脈硬化進行期の病態を無侵襲法にて把握すること.
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