研究概要 |
中枢内に投与されたバゾプレッシン(AVP)心血管作用を, 易脳卒中発症自然発症高血圧ラット(SHR-SP)及び, 先天性尿崩症ラット(DI)において検討した. AVPは, 側脳室中に, 2pg/kg/min(4.6ul/hr)の割合で, 21時間にわたり持続的に注入された. 血圧, 心拍は, 持続的に測定され, マイクロコンピューターにより分析された. AVPは, 対照Westar-Kyoto rat及び, Long-Evansにおいて一過性の昇圧と頻脈を引き起こしたが, 同一のAVPは, SHR-SP及び, DIにおいて, 長時間持続する降圧と徐脈を引き起こした. SHR-SPにおけるこの作用は, 投与中止後, 24-72時間と長時間にわたって続いた. また, LE,DIにおいては, AVPは, 血圧, 心拍の同様性を抑制した. 静脈内投与のAVP, 2pk/kg/minは, SHR-SP, DIの血圧, 心拍に影響を与えなかった. また, DIにおいて静脈内に投与されたDDAVP(0.6ng/kg/min, V_2-receptor agonist)及びd(CH_2)_5Tyr MeAVP(50ng/kg/min, V_1-receptor antagonist)は, DIの血圧, 心拍に影響を与えなかった. これ等の事実は, 中枢内において, AVPが, 心血管刺激性にも, 抑制性にも働き得る事を示している. これまでにSHR-SPの脳内AVP含量の低下が報告されている. 一方, DIにおいては, 中枢AVPの先天的な欠損が報告されている. 本研究においては, こうした高血圧ラット(SHR-SP, DI)においてのみ, 明らかな降圧, 徐脈が認められた事から, 中枢の内因性AVPによる心血管抑制作用が, 生理的に高血圧の発症を抑制している可能性が示唆された. またSHR-SP, DIの高血圧が中枢AVPの低下, 欠損によってもたらされている可能性が示唆された.
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