研究概要 |
本研究に於ては, 心筋細胞の収縮, 弛緩の調節に関るCa^<2+>, Na^+, 及びH^+の細胞内動態を明らかにするため, 心筋細胞から形質膜と筋小胞体膜を分離しそれぞれのイオンの輸送系の作用について膜レベルで検討すること, さらには, 輸送系を膜から分離精製してその機能的性質を調べることを試みた. 1.心筋細胞形質膜Na^+/H^+交換系の研究:ウシ心室筋を用いて高純度形質膜標品を調製し, 膜小胞内外のpHに依存した. ^<22>Naのとりこみと膜小胞内外のNa^+濃度勾配に依存したH^+輸送を測定し, アミロライド感受性のNa^+/H^+交換活性が存在することを確認した. ついで, 内因性のプロティンキナーゼを介した膜蛋白質のりん酸化がNa^+/H^+交換活性を増大させることを見い出した. 現在関与するキナーゼのタイプの同定を行っている. 又, 形質膜をコール酸で可溶化し, Na^+/H^+交換活性を人ユリピッド膜小胞に再構成することが出来た. 2.心筋形質膜Naポンプの精製:心筋Naポンプの分子種の検討を蛋白質レベルで行うため, 小実験動物心筋に適用出来る心筋Naポンプの精製法を開発した. この方法はchapsで膜を可溶化した場合, Na^+(0.2M)が共存する場合としない場合で, NaポンプATPaseの溶解度が大きく異なることを利用するもので, ラット心筋(〜1g)に適用した場合, 比活性が480±57μmol/mg/hr, SDS電気泳動上の純度が約50%の標品が得られた. この標品のATPaseは, ovabainに対して, 高親和性を示す分画(20%)と低親和性を示すもの(80%)から成っていた. 3.心筋小胞体Caポンプの反応機構の研究:GTPを基質とした場合の心筋小胞体Caポンプの反応機構を詳細に調べた. その結果, 反応の部分反応の速度定数は, ATPの場合とかなり異なっており, とくにりん酸化酵素生成反応が著しく遅いことが明らかとなった. しかし反応機構自体は, これまでの報告とは異なり, ATPと類似していることがわかった.
|