研究概要 |
複雑多岐にわたる弾性仮性半陰陽の病態を明らかにするため, 次の二課題の検討を行った. 1)Y染色体構造異常を伴った性分化異常症例の臨床的検討を行い, Y染色体の構造と機能の関係を推論した. 2)尿道下裂の病因検索の手段として簡便で迅速な培養皮膚線維芽細胞を用いたwhole cell binding assayの確立と尿道下裂症例での検討を行った. 得られた結果は以下の如くである. a)7症例の臨床的検討からY染色体の構造異常はそれ自体単独で存在するよりも, 45, Xの細胞系列を伴っていることが多い. その結果XO細胞裂との分量比にとってその表現系は女性型から弾性型まで大きなスペクトラムをとると思われた. b)Y染色体長腕部分のHeterochromatic regionの欠損であるYq-も異質性に富んでおり, 長腕近位部にもその欠損症が及んでいることが推定され染色体分析の限界が示された. c)H-Y抗原は動源体付近に存在することを支持した. d)包皮由来培養皮膚線維細胞を用いたwhole cell Androgen receptor assayにて高親和性, 低容量の一種類のrecptorが存在することが確かめられた. また, 本測定系は簡便で迅速であることも示された. e)本測定系を用い検討した尿道下裂、停留睾丸児のKd、Roは5例の尿道下D裂例でそれぞれ1.3-8.1×10^<-10>M、2311-11618 sites/celDlであった。1例の停留睾丸児ではKd3.5×10<-10>M、R_O5174 sites/cellであった。 f)尿道下裂の程度とAndrogen receptorの性質、KDd R_Oとの間には一定の関係が得られなかった。 g)皮膚線維細胞の培養において年長児, 成人由来の皮膚細胞培養は困難でさらに工夫が必要であった. h)今後, 各年令別でのCYTOSOL RECEPTORとnuclear receptorの割合の変化について検討する予定である.
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