研究概要 |
小児気管支喘息の本態は気道過敏症の亢進にありといわれている. その評価はメサコリンやヒスタミン吸入試験により行なわれているが, 小児, 特に乳・幼児では困難なことが多かった. 我々は年長児について"アストグラフ"によりメサコリン吸入試験を行ない気道過敏性を検討し, さらに年少児ではアストグラフ法における呼吸抵抗の上昇を経皮動脈血酸素分圧測定器を用いて測定しうることを証明した. 本方法により乳児から年長児まで安全にかつ迅速にメサコリン吸入試験が可能となり, 下記の成績を得た. 1)Dmin,Stについてアストグラフ法と経皮動脈血酸素モニター法(以下経皮モニター法)との間には高度の相関がみられた. 2)経皮モニター法により3ヶ月以上の児で気道過敏性の測定が可能であった. 3)Dmin(sensitivity)は小児気管支喘息においては健常児に比し低値を示すが, 喘息の重症度別に見ると軽症が最も高値を示し, 中等症, 重症になるに従って低下した. すなわちDminは重症皮を表わすことが判明した. 4)小児気管支喘息においてアトピー群と非アトピー群について比較すると非アトピー群ではstが高値であった. 5)喘息のDminは年齢的変動を示した. 以上の結果から, 喘息の発症には気道過敏性の成立は必要条件であり, さらにその成立には後天的な因子の関与が考えられた. これらの事実は気管支喘息発症予防の手掛りとなると思われた. 今後, さらに検討が必要である.
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