研究概要 |
シスプラチン(CDDP)は有効な抗腫瘍剤であるが, 腎毒性, 内耳毒性があり, このためCDDPの長期使用は困難なものとなっている. 本研究では正常血管を収縮させ, 腫瘍血管を収縮させないドーパミンの併用によりCDDPの腎毒性の軽減をはかり, 腫瘍移行性を高めることを目的として行なった. DSマウスを用いたCDDPの毒性き検討では, ID50は15mg/kgであり, 死亡原因はいずれもCDDPによる腎毒性であった. ドーパミンのアナログであるイボパミンと併用し, ID50のCDDPを投与したところ, イボパミン100mg/kg以上の濃度で延命効果が得られた. CDDPのマウスにおける薬理動態を検討したところイボパミン300mg/kg, 併用群の方がCDDPの血中濃度は高く, 腎内のCDDP濃度は低値を示していた. このことは, イボパミンの併用はCDDPの腎毒性を軽減させ, 腫瘍への移行性を上昇させることを示唆していた. 次る小児癌患者におけるCDDPの薬理動態を検討てたところ, ヒトでもマウスと同様の二相性の血中排泄パターンを示した. しかし, 投与前の腎機能が正常の小児でも, CDDPをくり返し投与をうけたものはCDDPの排泄遅延を認めた. この結果はCDDPをくり返し投与すると, CDDPの毒性が出現しやすい性能を示唆するものであった. このことから, 神経芽腫患児の4回目のCDDP投与時, CDDPの副作用出現を予防する目的でドーパミン併用治療法を行なった. しかしながらドーパミンによる副作用が出現し, 又, CDDP投与後腎機能障害が出現した. 次にIV期の神経芽腫につき尿中ドーパミンに昇群と非昇群との間でCDDPの有効性, 毒性を検討したが, 両群の間には特別な差違を認めなかった. 以上の結果をまとめると, マウスにおいては, CDDPをドーパミンと併用すると腎毒性を軽減する可能性を示唆する結果が得られたが, ドーパミン併用によってCDDP療法のヒトへの応用は, 満足すべき結果が得られなかった
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